バイオレットライトの可能性:大学発バイオベンチャーが描く未来の視力革命

株式会社坪田ラボ
(画像=株式会社坪田ラボ)
坪田 一男(つぼた かずお)――代表取締役社長
1980年慶應義塾大学医学部眼科学教室入局、米国ハーバード大学留学を経て、1987年国立栃木病院眼科医長、1998年東京歯科大学教授(眼科学)を歴任し、2004年慶應義塾大学医学部眼科学教室教授。2012年に株式会社ドライアイKT(現株式会社坪田ラボ)を設立、2019年2月より株式会社坪田ラボ代表取締役社長(現任)。2021年慶應義塾大学名誉教授 称号授与。
株式会社坪田ラボは“VISIONary INNOVATIONで未来をごきげんにする”をミッションに掲げ、「近視、ドライアイ、老眼、脳疾患に画期的なイノベーションを起こす」という目標のもと、慶應義塾大学医学部発ベンチャーとして、世界的な近視の激増、ドライアイによるQOL(クオリティオブライフ)の低下、老眼の予防治療への強いニーズといった社会課題に真正面からチャレンジし、起業家価値の増大を目指しています。

これまでの企業の変遷と事業の特徴ついて

当社は、私が教授として勤めていた慶応義塾大学の医学部での発見から始まった企業で、近視とドライアイと老眼を対象としたソリューションを開発する事業を行っています。

我々はイノベーションをサイエンス×コマーシャルゼーションという枠組みで捉えています。私は、元々は研究者であり、サイエンスは非常に得意としている一方、コマーシャリゼーションに関してはあまり知識がなく、ビジネススクールに通ったり、ベンチャー協議会を作って勉強会を開催したりして、一生懸命勉強してきました。このコマーシャリゼーションの部分は多くの苦労がありました。

株式会社坪田ラボ
(画像=株式会社坪田ラボ)

具体的には、サイエンスについて、一つ例を挙げますと近視に対するOPN5仮説と呼ばれる、最先端の仮説を提唱し、学会でも論文を発表しています。簡単にご説明すると、バイオレットライトが視力など眼にとって良い影響を与えるだけでなく、脳に対しても良い影響を与えるという仮説です。このメカニズムについては、すでにある程度判明しており、当社のサイエンス領域の優位性を示すものだと思います。

一方、コマーシャリゼーションにおいては、革新的なことを行うというよりは、我々の研究は全く新しいものであり、大企業はなかなか手を出しにくい領域であるため、このポジションを活かして、研究の成果を社会に還元できるようにやっていくということで、一歩ずつ着実に前進しているところです。

平成19年に学校教育法が変わってからは、大学でイノベーションを起こすために、大学が支援してくれています。ただ、日本の近視に対する問題意識は海外に比べると遅れていて、すでに海外では完全に社会問題として認識されています。日本でも最近になってやっと、近視対策推進議連を発足するなど、近視に対する問題意識を持つようになり、国としての対応が始まりつつあるという状況です。

上場を目指した背景

上場した一番の目的は優秀な人材の獲得です。当社は、私自身が大学の教授であることもあり、研究においてはトップレベルの知見や技術が揃っている一方で、ビジネスマンとして優秀な人材を確保することに苦労しており、それを解消するために上場しました。つまり、上場はゴールではなく、あくまで世界の近視問題を解決するための手段の一つと捉えています。

今後の事業戦略や展望

当社の現在のビジネスモデルはBtoBです。医薬品や医療機器の開発で治験を行うために、数十億円単位の研究開発費や、それを行うためのチャネルが必要となるため、パートナー企業と契約して、独自のプランで経営しています。ただ、長期的な視点で考えると、今後ヘルスケアという大きな産業が発展するときに、BtoCのビジネスも必要になる可能性が高いと考えています。そのため、当社のパートナー企業とは競合にならないように、全く違う領域でBtoCのヘルスケア事業を行うことは日々模索しています。

株式会社坪田ラボ
(画像=株式会社坪田ラボ)

また、パートナー企業とのアライアンスの拡大についても常に検討しています。パートナー先の選定においては、方針や考え方を最も重視しており、短期的に利益を上げるのではなく、中長期的に社会を良くしたいという価値観を持っており、お互いにWin-Winな関係を築ける企業を探しています。言い換えると未来を良くするためにリスクを取れる会社と協業することでさらなる成長を目指しています。

株式会社坪田ラボ
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今後の展望と貴社事業の可能性について

現在は、事業拡大や資金調達ではなく、とにかく研究開発を前進させるということを最注力領域として考えています。当社はコマーシャリゼーションに注力した方が早く成長できると言われることも多いですが、事業拡大が1年遅れてでも、大学発ベンチャーのあるべき姿としてサイエンスの方を丁寧に前進させることで、信頼していただける企業になりたいと考えています。そのため、何に投資するかというと研究開発になります。

また、当社の可能性については、ある意味バイオレットライトの可能性とも言い換えられると思います。眼は中枢神経の一部ですが、この神経系の中のOPN5という受容体を活性化させることで、目の血流だけでなく、脳の血流にも影響を与えるということが分かりました。元々、知識としては、目の血流と脳の血流が一緒に動いてるということは知っていたのですが、実際に調べてみたら、人間でもネズミでも、眼の血圧が上がれば脳の血圧も上がるという結果が得られたので、この領域を拡大してきました。

コロナによるステイホームによって、人々の近視化が進み、うつ病も増えたという研究論文が多く発表されていますが、これは、外出してバイオレットライトを浴びる機会がなくなったことで、脳の血流が下がったことが原因であると考えています。このように、バイオレットライトは社会現状にも大きな影響を与えているのです。つまり、我々がバイオレットライトを活用することができれば、いくつもの社会問題を解決することにつながると確信しています。

株式会社坪田ラボ
(画像=株式会社坪田ラボ)

ZUU onlineのユーザーに??

我々は、「VISIONary INNOVATIONで未来をごきげんにする」というビジョンを掲げています。全世界の近視人口は、2050年には50億人になると言われていますが、この中の少なくとも10%を我々のテクノロジーで解決することを目指しています。それを実現できれば、少しは”未来をごきげんにした”と言えると思います。さらに、来年はうつ病と認知症とパーキンソンの特定臨床研究の結果が出ますので、そこで、いい結果を出して、眼だけでなく脳のごきげんにもチャレンジしたいと考えています。

まだ先の未来かもしれませんが、大きな未来に挑戦している企業ですので、この未来に共感して一緒に挑戦していただけますと幸いです。

氏名
坪田 一男(つぼた かずお)
社名
株式会社坪田ラボ
役職
代表取締役社長
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