インフラ領域で新しいビジネスを創るーー株式会社グリッド

特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

株式会社グリッド
(画像=株式会社グリッド)
曽我部 完 (そがべ まさる)
株式会社グリッド 代表取締役社長
株式会社日比谷花壇入社後、業界に先駆けたeコマースを導入し新規ネットワーク事業に従事。その後、物流アウトソーシングサービスを経て、2009年に、新たにグリッドを創業。国内では稀有な機械学習/深層学習AI開発プラットフォームを独自開発。生活を支える基盤である社会インフラの変革を通じて、さまざまな社会課題の解決に取り組む。AIの更なるブレークスルーを生み出す事を目指し、最前線で活動している
グリッドは、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」を企業理念として、テクノロジーを用いて社会インフラにイノベーションを起こし、インフラ全体の最適化を目指し、社会に貢献することをミッションに活動しているベンチャーです。国内のインフラ関連企業の計画業務を対象に、電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティ等の領域で、計画業務を自動化・最適化するAIエンジンを開発し、プラットフォームとして提供することで、社会インフラのデジタル化に貢献しています。

再生可能エネルギー事業からAIを用いた「計画最適化」への挑戦

ーー初めに、設立から現在までの事業の変遷について教えてください。

株式会社グリッド 代表取締役社長・曽我部 完氏(以下、社名・氏名略): 当社は2009年の設立で、元々は再生可能エネルギーに関する事業を展開していました。その後、設立して4、5年後にAIの研究を開始し、直近ではAIを用いた「計画最適化」の領域にピボットをしています。

2014年ごろにアカデミアにいた兄弟と「AIを活用して何か一緒に出来ることはないか」と話をしたことがピボットの一番初めのきっかけでした。再生可能エネルギー事業で事業成長をする傍らで、AIの研究開発を開始し試行錯誤を続けました。2014年から2019年にかけて多くのプロジェクトを実施した中で、2019年に「インフラの計画最適化」の領域経営資源を集中する意思決定をしました。そこから、当社のお客様であるインフラ企業の計画を立案するAIエンジン開発からシステム開発まで一貫した開発を行うAI最適化事業を展開しています。

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パブリックカンパニーになるために目指した上場

ーーそのような事業の変遷の中でも、上場を目指された背景や理由についても教えてください。

曽我部:2019年の「インフラの計画最適化」の領域への事業転換が上場を目指すきっかけになりました。再生エネルギー事業が黒字だったこともあり、外部からの資金調達を必要とせずとも独自資本で経営していくことは可能な状態でした。しかし、インフラ領域で事業を展開していく上で、お客様や社会から会社として信頼を得ることが重要になります。社会的な責任も大きくなる中で、パブリックカンパニーとなる方が合理的であると判断し、上場すことを決めました。

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ーー実際に上場されたことによってどのような変化があったのでしょうか。

曽我部:会社全体の考え方に大きく変化がありました。当然のことではありますが、上場によって多様なステークホルダーも含めた意思決定が求められるようになります。サービスを作る、投資を実行する、という1つ1つの意思決定に資本効率や、企業価値の向上に貢献するのかが問われ、常に市場との対話も求められます。そのような経験の中で、経営陣だけではなく、社員も含めて「上場企業としてのふさわしい意思決定」というものを考えられるようになったと感じています。

グリッドが思い描く事業拡大

ーー次に、貴社の成長戦略についてお聞きします。まず、短期・中期的な成長戦略についてお聞かせください。

曽我部:短期的には、既存のお客様へのアップセルやクロスセルに注力をしていきます。例えば、電力会社を例にとっても、発電所の運転計画や送配電の計画など、様々な計画が存在しています。また、時間軸が変わると企業の計画の多様性はさらに増加します。多様で大量の計画が存在することが、アップセルやクロスセルを可能にし、これが当社の成長ドライバーになると考えています。

また、中期的には既存のお客様へのサービス提供によって積み上がった経験やノウハウを抽象化し、これをプロダクトに落とし込んでいきたいと考えています。これによって国内外のお客様に対して横展開をしていく構想があります。

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ーーさらに長期的には、いかがでしょうか。

曽我部:国内市場にまだまだ成長余地があるので、まずは国内で実績とプロダクトを作っていくことを最優先としています。一方で、当社の事業領域である電力や船、鉄道などのインフラ領域は、どこの国のものであってもオペレーションは同じです。将来的に、日本で確立したプロダクトを海外で展開していくことは十分可能であると考えています。

既に、海外展開に向けた打ち合わせは行っていますが、海外でのインフラ事業は国内以上にリードタイムが長く、数年規模での取り組みが必要です。したがって、今すぐという話ではなく、数年という時間軸での事業展開を考えています。

インフラとITの融合により新たなビジネスモデル構築へ

ーー次に、御社のファイナンス計画や曽我部代表のファイナンスに対する考え方を教えてください。

曽我部:まずは上場時に調達した資金を、しっかりと収益を生むものに投資していきたいと考えています。そのなかでも、エンジニアを中心とした人材への投資は優先度が最も高い部分です。採用と育成への投資を強化し、拡販性・再現性・収益性に優れたプロダクトを開発していきます。

また、長期的にはM&Aを活用した事業成長についても検討していきます。当社の事業ポートフォリオを埋めていただけるようなパートナーさんを探しつつ、推進していきたいと考えています。

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ーーファイナンスに限らず、御社の今後の重点テーマについてはいかがでしょうか。

曽我部:まずは既存のビジネスをしっかりと伸ばしていきますが、中長期的にはインフラ領域とIT領域の組み合わせによって生まれてくる新しいビジネスにチャレンジしていきたいと考えています。

当社はITの会社ですが、事業領域は巨大なアセットの塊であるインフラ領域です。巨大で大量のアセットをITで制御していく中で、「インフラ領域のオペレーションの自動化」のような領域が生まれてくると考えています。

「スマートシティ」などはその代表例ですが、それ以外にもインフラ領域とIT領域の様々な組み合わせによる、新たなビジネスが生まれてくることが予想されます。当社としても、現在提供している計画立案サービスにとどまらず、インフラ領域に深く入っていきながら新しいビジネスを作っていきたいです。

グリッド曽我部代表からZUU onlineへ一言

ーー最後に、ZUU onlineユーザーや投資家の皆さんにメッセージをお願いします。

曽我部:弊社はAIベンチャーですが、決して派手ではなくしっかりと地に足をつけて経営をしていく企業カルチャーです。企業価値に関しても、実態に合わせて着実に伸ばしていきたいと考えておりますので、ご賛同いただける方にはぜひ応援していただけますと幸いです。

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氏名
曽我部 完 (そがべ まさる)
社名
株式会社グリッド
役職
代表取締役社長
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