2030年までに5,000棟の住宅を建設するための2つの戦略とは? ―― 株式会社ロゴスホールディングス

特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

株式会社ロゴスホールディングス
(画像=株式会社ロゴスホールディングス)
池田 雄一(いけだ ゆういち) ―― 株式会社ロゴスホールディングス 代表取締役社長
1967年北海道帯広市生まれ。一級建築士。
個人設計事務所、大手ハウスメーカー勤務を経て、創業メンバーとして、㈱ロゴスホームの経営に参画し、2006年から2021年まで代表取締役。
現在は、㈱ロゴスホーム、豊栄建設㈱、㈱GALLERY HOUSE、㈱ROOTLINK、LOGOS CREATIVE OFFICE PHILIPPINES INC.を束ねる㈱ロゴスホールディングスの代表取締役社長を務める。
株式会社ロゴスホールディングス
6社の連結子会社からなる注文住宅を主業としたグループ。
デジタルマーケティングを活用して、年々集客数を伸ばすとともに、家づくりに関わる全てのプロセスをDX 化し、効率的なオペレーションによる高い生産性と少人数体制による早い出店スピードを実現。販売エリア・シェア拡大により成?し続けている。
主な事業会社は㈱ロゴスホーム(北海道・東北・北関東)、豊栄建設㈱(札幌市・苫小牧市)、㈱GALLERY HOUSE(栃木県)。グループ全体で営業拠点は29拠点。

創業時からの事業変遷

―― ロゴスホールディングスの事業変遷について教えていただけますか?

株式会社ロゴスホールディングス代表取締役社長・池田雄一氏(以下、社名・氏名略) 当社の原点は21年前に私が北海道の帯広市で創業した、注文住宅の会社「ロゴスホーム」です。当初は帯広・釧路など地方で住宅を作り、その後北海道全域、東北に店舗を広げました。そして、5年前にファンドが入り、札幌の豊栄建設や宇都宮のGALLERY HOUSEを取得し、事業規模を拡大しました。それがIPOに至った流れです。

―― なるほど、ありがとうございます。創業時からの池田様ご自身の思いについてもお聞かせいただけますか?

池田 もともと私はハウスメーカーに勤めていて、建築技術者として働いていました。しかし、もっとお客さまの目線に立った家を作りたいと考え、独立しました。帯広市は日本でもっとも寒暖差が激しい地域で、冬は-25℃、夏は+35℃にもなります。そんな厳しい気象条件の中でも、快適に暮らせる性能の家を普通のサラリーマンでも手が届く価格で提供したいと考え、創業しました。

厳しい環境の中でノウハウを積み重ね、住宅の性能や施工品質が向上しました。それらが全国で通用するのではないかと考え、事業を広げていったのです。

上場を目指された背景や思い

―― ロゴスホールディングスの上場を目指された背景についてお伺いできますか?

池田 もともと、創業当時から将来は上場したいと思っていました。なぜかというと、会社を成長させるためには、上場というステップが必要だと感じていたからです。たとえば、次の世代に経営を託す場合でも、自分がオーナーのままでは自分のリスクは減らないですし、口出しをしてしまうと思います。だから、IPOが一番よい方法だと考えていました。

―― いつから具体的に上場を目指し始めたのですか?

池田 本格的に準備を始めたのは、今から10年前です。その時、ロゴスホームはまだ単独で上場の準備をしていて、売上の規模は100億円ぐらいでした。

当時は、売上や利益は伸びていたのですが、北海道ということもあって、管理系の人材がなかなか集まらず、ガバナンスの体制構築や帳票の整理、基幹システムの整備などが進まなくて、上場が難しいと感じていました。そんな時に、あるFAの方から上場会社のグループに入る方法や、ファンドを入れて上場する方法を提案されました。

―― そこでどのようなご決断をされたのですか?

池田 いろいろな話を聞いた中で、エンデバー・ユナイテッドというファンドだけが人材も出して手を動かし、上場の面でも協力してくれると言ってくれたので、そこに決めました。それが今から5年前のことです。

ファンドが入ってからは、管理体制も整い、上場審査を一気に進めることができました。

―― 素晴らしいですね。上場までの道のりを振り返っていかがですか?

池田 いろいろな人の意見を取り入れながら、課題を解決してきました。時間はかかったかもしれませんが、ここまでたどり着けたことに感謝しています。

今後の事業戦略や展望

―― 今後の事業戦略についてお聞かせください。上場は一つの通過点だと思いますが、長期的な狙いがあるのではないでしょうか?

池田 今の長期的な目標としては、2030年に5,000棟という目標を掲げています。その中で、まずオーガニックに自社の中で2,500棟を達成したいと考えています。これに関してはロゴスホームという会社で出店していきます。現在グループ全体で29の拠点がありますが、これを3年間で50拠点まで増やし、東北や北関東のエリアを中心に展開していきます。

また、もう一つの戦略はM&Aです。というのも、地方の工務店は非常に厳しい経営環境にあります。昔は地域で一定の信頼を得ていれば、毎年安定して契約をもらえましたが、今はお客さんの意識の変化や環境の変化に対応しきれず、厳しい状況です。そこで、地方の工務店をM&Aで取り込み、うちのノウハウを使って一緒に成長し、残りの2,500棟を達成したいと考えています。

―― 確かに世代によって家を持つということに対する思いが変わっていますね。

池田 はい、直近ではコロナで住宅に対する意識が見直されたということがありました。ウッドショックで一度冷え込み、さらに円安で住宅の値上がりが進んでお客さんが離れていっている状況だと思います。

―― M&Aによって地方の工務店を取り込む際、経営権はどうされるのでしょうか?

池田 その経営者にはそのまま継続してもらいます。若い人であればそのまま継続し、ある程度ご年配の方であれば後継者を一緒に育てていくようなやり方をとります。事業承継の問題も同時に解決できると考えています。

―― 今後のロゴスホールディングス全体について、将来的なビジョンはどのようにお考えですか?

池田 今回の株式上場によって、これからさらに優秀な人材を採用できると考えています。そういった人も含めて、今いる社内の人たちと一緒に、5年ぐらい先を見据えて次のリーダーを育てていきたいと思っています。

今後のファイナンス計画や重要テーマ

―― 今後の財務計画や開発計画、それ以外にも重要な経営上の課題は何でしょうか?

池田 まず、ファイナンス領域が重要な課題です。今回、新株の発行は約1億円程度で、現在のファンドが50%近く株を持っています。まずはファンドがEXITしていかなければ、自分たちの資本政策が何もできない状況です。

―― それでは、今後の具体的な対策はどうお考えでしょうか?

池田 これは非常に珍しいケースですが、上場時にお取引先さま20社ぐらいに、当社の株を引き受けていただきました。ファンドの出口戦略としては、お取引先さまに分散して購入いただくことや自社で買い取ることなど、様々な方法を検討しながら、進めて行くことになろうかと思っています。

ファンドが早期にEXITすることが、彼らにとっても、私たちにとっても、社会にとってもいいことだと思っています。

―― 成長戦略の中でM&Aをどんどん続けていくということですが、株式交換も検討していますか?

池田 はい、株式交換もいい方法だと考えております。上場したことにより、資金調達の選択肢が増えましたので、市場の動向を見ながら、その時に応じて最適な判断ができればと考えています。今後はより一層会社を成長させ、株主の皆様の期待に応えていかなければなりませんからね。嬉しい課題ですね。マーケットが厳しい中で、なかなかそこまで至ることができないですから。

―― なるほど、ありがとうございました。

ZUU onlineのユーザーに??

―― 最後に読者に向けてぜひ一言メッセージをお伝えいただければと思います。

池田 戸建て住宅というのは、日本で昔からある産業で、マーケット的には縮小しているというイメージがありますが、実は8兆円以上ある巨大なマーケットなのです。しかも、この市場には独占的な企業がおらず、日本で一番シェアを持っている会社でも1%もないのが現状です。

独占的な企業がいないため、努力次第でまだまだ伸ばせる余地があります。業界としては、昔から工事現場で釘を打ったり、トラックで現場まで材料を運んだり、車で現場監督が現場を見に行ったりしているのが一般的な進め方ですが、当社はデジタルとDXや独自の工法を使って生産性を高めています。その結果、他社の2倍以上の生産性を実現し、成長し続けています。

そのため、ぜひ今後も当社の成長過程を見ていただきたいと思います。決算発表やIR資料をご覧いただき、興味を持っていただけると嬉しいです。

―― 本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

氏名
池田 雄一(いけだ ゆういち)
社名
株式会社ロゴスホールディングス
役職
代表取締役社長

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■取材対象者 池田 雄一 代表取締役社長

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