中長期投資家向けの暗号資産取引所とは?SBI VCトレードインタビュー

(撮影=NET MONEY編集部)

SBI VCトレードはSBIホールディングス傘下のSBI VCトレード株式会社(SBIグループの100%子会社)が運営している暗号資産取引所です。

SBIグループならではの安心安全の強固なセキュリティに強みがあり、取り扱い銘柄数は24銘柄と、この数年でかなり拡大されました。特に、ステーキングに対応している銘柄数が多く、国内最多の取り揃えとなっております。

「当社のお客様の多くは中長期的に暗号資産を保有したいと考える方々です。そのため、分散投資の一環として暗号資産に投資する方に向けて、ステーキングサービスの強化を目指すようになりました」と語るのはSBI VCトレードの近藤智彦社長です。

NET MONEY(ネットマネー)編集部は、ネット証券業界大手SBIグループの一員である、SBI VCトレードの特徴に迫るため、近藤社長にインタビューを行いました。

ビットコインなどの暗号資産の価格が下落し、市場が低迷した「冬の時代」を乗り越えた暗号資産市場は、今後の展望が注目されています。今回は暗号資産市場の未来や、暗号資産投資をどのように始めるべきかについても詳しく掘り下げているので、これから投資を始めたい初心者は必見です。

SBIグループの一員として、安心安全な取引環境を提供

(撮影=NET MONEY編集部)

――SBI VCトレードが、初心者や未経験者層の獲得に向けて取り組んでいる施策や特徴は何ですか?

SBI VCトレードの特徴としては、まずSBIグループの一員であることが挙げられます。特に、株式や為替(SBI証券やSBI FXトレードなど)で投資経験のある方々が、暗号資産にも興味を持っていただいてお取引いただいている点が強みです。SBIというブランドの信頼性に加え、同じグループ内で安心して取り引きできることが、大きな特徴だと思います。

セキュリティを最重要視していることも当社の特徴です。SBIグループで培ってきた金融リテラシーやセキュリティシステムを活かして、安全な取引環境を提供しています。

また、メジャーな信頼性の高い銘柄を中心に取り扱っており、それぞれの銘柄の情報発信に力を入れています。特に、「ステーキングサービス」が充実しており、対象銘柄を購入・入庫いただければ、特別な手続きなしで保有する暗号資産を増やすことができます(※)。

※暗号資産の月間平均保有数量に応じて、SBI VCトレード口座内で毎月自動的に報酬を受け取れる

ステーキングとは?
暗号資産取引所で利用できる「ステーキング」とは、特定の暗号資産を保有するだけで報酬を得られるサービス。暗号資産を預けることでブロックチェーンネットワークの運営に貢献していることになり、その見返りとして報酬が得られる。

取り扱うのは時価総額が大きいメジャーな通貨

――取り扱う銘柄の選定基準について、どのようなポイントを重視されていますか?

メジャーな銘柄を抑えていくというのが基本方針です。暗号資産にはそれぞれ時価総額があり、その時価総額が大きいものを中心に揃えています。

(画像=SBI VCトレード

――時価総額の大きい銘柄を選ぶ理由は、安全性が高いからでしょうか?

時価総額が大きいことが必ずしも安全というわけではありませんが、グローバルで一定の評価を得ているという点で、安全性の指標の1つにはなり得ます。株式市場でも時価総額が大きい事は、それだけ投資家の数・売買が盛んな一つの指標である通り、暗号資産も時価総額が大きい暗号資産は一定の信頼性を持っていると考えています。

数より質を重視。銘柄情報も充実

――時価総額以外に重視しているポイントはありますか?

暗号資産の発行体や運営主体としっかり連携を取ることも大切にしています。単に取り扱い銘柄を増やすだけではなく、各暗号資産のブロックチェーンが目指す方向性について、情報をお客様に提供したり、共同でキャンペーンやイベントを行ったりしています。特に初心者の方にとっては、どの銘柄を選べばいいのか分からないことが多いので、私たちからしっかりとした情報を提供することを重視しています。

――確かにSBI VCトレードさんのホームページでは各銘柄の特徴が紹介されていますよね。そういった情報提供には、何か理由や思いがあるのでしょうか?

暗号資産投資に関するコラムや週間レポートを発信しています。他の取引所にはあまりない特徴かと思います。

海外の暗号資産取引所では、100や1,000といった多くの銘柄を取り扱っているケースもあります。しかし、日本国内では1つ1つ申請が必要なので、取り扱い銘柄数を一気に増やすことは難しいです。そのため、数を追うのではなく、各銘柄に関する詳しい情報を提供した方が、新しく参加されるお客様にとって選びやすい環境になると考えています。特に、これから暗号資産を始める方には、各銘柄の特徴や、その銘柄・プロジェクトが何を目指していて、今はどういう進捗状況なのかを把握した上で投資していただきたいと思っています。

(画像=SBI VCトレード

国内のステーキング取り扱い通貨数No.1の理由

(画像=SBI VCトレード

――SBI VCトレードさんが中長期保有ユーザー向けに提供している「ステーキングサービス」の特徴について詳しく教えてください。

SBI VCトレードでは、日本で最も多くのステーキング対象銘柄を取り扱っており、13銘柄が対応しています(2024年10月時点)。対応している銘柄を購入いただければ、特別な手続きなしで資産が増えていくのが特徴です。

――国内最多の13銘柄がステーキングに対応していることについて、これを実現できている理由は何でしょうか?

暗号資産の取引スタイルは多岐にわたりますが、我々のお客様の多くは中長期的に暗号資産を保有したいと考える方々です。そのため、分散投資の一環として暗号資産に投資する方に向けて、ステーキングは非常に適していると考えステーキングサービスの強化を目指すようになりました。そして、2023年5月に、SBI VCトレードが日本で初めてイーサリアムのステーキングを開始しました。

短期売買に適したスプレッドや PC・スマートフォンのUIに特化した取引所がある中で、我々は中長期投資のサポートに注力し、資産を預けるだけで増えるステーキングサービスの強化に力を入れてきました。現在、ステーキングサービスにおいて国内最多の銘柄を取り扱うことになったのはその結果といえます。

(画像=SBI VCトレード

――日本で初めてイーサリアムのステーキングを開始されたとのことですが、イーサリアムのステーキングは取り扱いが難しいのでしょうか?

そうですね、簡単に始められるわけではありません。新しいサービスを提供する際は、技術的な対応だけでなく、規制当局との調整やコンプライアンス、安全性確保のためのさまざまな対応が必要です。技術的な課題だけでなく、当局とのやり取りもスムーズに進めなければ、サービスを開始することは難しいです。

我々が国内でいち早くイーサリアムのステーキングサービスを開始できたのは、これらの課題を総合的にクリアできた結果といえるでしょう。

――実行するのが大変だからこそ、各社慎重に検討されているのでしょうね。

そうですね。ステーキングは個人でもできますが、例えばイーサリアムの場合、32ETH(約1,000万円)が必要です。個人で行うには一定の資金が必要ですし、取引所によっては、預けた資金が一定期間、拘束されます。その点、我々のサービスでは拘束期間がなく、置いたその日からステーキングが始まり(※)、手続きも不要で、いつでも売却できます。ステーキングを一般投資家向けに大幅に簡素化しているのが、他社にはない強みです。

※資産がネットワークに参加して報酬を得るためのプロセスが始まる、ということ

ネット証券のパイオニアとして25周年。セキュリティ対策は多重化・分散化

(画像=NETMONEY編集部)

――初心者の中には、昨今の流出事件などでセキュリティに対して不安を感じている人もいると思います。SBI VCトレードのセキュリティ対策について、詳しく教えていただけますか?

そうですね。まず、法令・規制で定められていることは当然実施しています。ただ、最近の事例を見ると、法令通りに対応していても問題が発生する可能性もあります。そのため、ウォレットの管理方法や、ホットウォレットとコールドウォレットの使用など、物理的な対策も含めて多重化・分散化を徹底しています。技術的な対策だけでなく、人的・物理的な側面にも配慮し、何重にもセキュリティを強化しています。

――その多重化や分散化というのは、法律で定められている以上の自主的な取り組みということですか?

はい、単に法令を守るだけではなく、独自の管理体制を構築しており、外部からも「他社よりも厳しい」という評価をいただいています。

――SBI証券など、長年金融業界でトップを走ってきたSBIグループの経験が活かされているのでしょうか?

SBIグループはネット金融のパイオニアとして今年で25周年を迎えます。金融業界で培ってきた管理体制やノウハウは、ブロックチェーンのような新しい技術にも応用されています。多くの従業員がそのような経験を持っていることは、セキュリティ対策にも活かされています。

(画像=SBI VCトレード

暗号資産市場は「冬の時代」後、どうなる?

(画像=NETMONEY編集部)

――ここ数年の暗号資産市場の変化について、どのように捉えていますか?

2021年に、ビットコインの価格は1BTC=700万円まで上昇しましたが、その後3分の1ほどの200万円台まで下落し、いわゆる「冬の時代」と言われた時期がありました。しかし、2024年にはアメリカでビットコインの現物ETFが正式に認められたという大きなニュースがありました。これは市場にとって非常に重要な出来事です。また、ETF承認をきっかけに大手機関投資家が暗号資産市場に参入してきたことも大きな変化です。プレイヤーが増えることで市場の流動性が高まり、取引量も増加しています。今年5月には国内の暗号資産口座数が1,000万を超えたというニュースもありましたが、暗号資産市場への注目はますます高まっていると感じています。

――今後の暗号資産価格をどのように予想していますか?

価格は上下動しますが、長期的に見れば上昇傾向が続く可能性はあると思います。特に、価格以外の要素にも注目すべきです。例えば、アメリカのビットコインETFの残高が増加傾向にあることや、ビットコインは金と同じく採掘量が限られているため、希少性が高まる構造になっています。また、半減期によって新たに市場に出回るビットコインの量が減少することも、価格上昇の要因となり得ます。

2024年下半期の注目は米大統領選

(画像=NETMONEY編集部)

――2024年下半期に注目すべきイベントはありますか?

現時点で最も注目すべきは、やはりアメリカの大統領選挙ですね。トランプ前大統領は選挙期間中にビットコインや暗号資産を支持する姿勢を表明しています。

一方で、アメリカの証券取引委員会(SEC)がリップル社を訴えた事件もあり、アメリカの政治や経済が暗号資産市場に大きな影響を与えているのは間違いありません。例えば大統領選挙の結果が、暗号資産の価格に大きな影響を与えることがあります。

――アメリカの政治・経済の動きが重要な要素になるんですね。

もう1つ注目すべきは為替の動向です。最近では円安が進み、円相場が160円近くまで下がった後、現在は150円前後で推移しています。暗号資産の価格は基本的にドルベースで動いているため、円安になるとビットコインなどの暗号資産の価値が上昇します。

3年前は米ドルが110円程度でしたが、円安が進んだ今、ドルを持っておけば良かったと思う人も多いでしょう。円安になると、円の価値は相対的に下がりますが、ドルやビットコインを持っていれば、円安に伴ってその価格が上昇します。為替相場は円安や円高を引き起こすものであり、暗号資産市場において非常に重要な要素の1つです。

暗号資産は分散投資の一環

(画像=NETMONEY編集部)

――これから暗号資産を始める方に向けて、どのように投資を始めたら良いか、また知っておいてほしいことについて教えていただけますか?

まず、暗号資産は一般的な資産よりも価格変動が大きい(ボラティリティが高い)という点を理解してほしいです。ですので、ご自身の全財産を暗号資産に投資することはおすすめしません。むしろ、分散投資の一環として捉えることが大切です。

例えばビットコインは今年、日本円建てで過去最高値を更新しており、長期保有の方はどのタイミングで買った人も一時的にプラスになったかと思います。ただし今後の価格は分かりません。現在の価格状況だけでは判断できないので、その意味でもまずは分散投資の一部として少額から始めてみるのがいいと思います。

――初心者はいくらから投資を始めるのが良いのでしょうか?

例えばビットコインの場合「価格が3分の1に下落しても耐えられる範囲で投資する」といった具合に、銘柄ごとに投資金額の上限を決めておくことが重要だと思います。

2021年から2022年にかけてビットコインの価格はおよそ3分の1まで下落しました。このように、タイミングが悪いと投資額が大幅に減少する可能性があります。一方で、2022年から2024年の2年間で、ビットコインの価格は約4倍になるなど、短期間で大きく上昇するケースもあります。

ビットコインでさえこれほどの変動がありますから、それ以外の銘柄ではさらにリスクが高いことを認識しておくことが大切です。

――積立投資であれば、1500円や月に1000円といった少額からでも始められますね。

そうですね。中長期的な視点で積み立てをするのは非常に有効だと思います。あまり頻繁にチェックせず、例えば確定拠出年金(iDeCo)のように、放置しておいて知らない間に積み上がっていくスタイルが良いかもしれません。暗号資産をその一環として取り入れるのも一つの方法だと思います。

(画像=SBI VCトレード

キャッチコピーは「暗号資産もSBI」

(撮影=NET MONEY編集部)

――SBI VCトレードの今後のユーザー獲得戦略についてもお聞かせいただけますか?

ありがたいことにSBI VCトレードの口座数も過去最大の増加を記録している状況です。今後は、投資家や興味を持っている方々に情報を届ける機会をさらに増やしていきたいと考えています。例えば、メディアの皆様からのインタビューや、ユーザーが暗号資産に触れやすい環境を提供する取り組みを強化していくつもりです。

――特に課題に感じている部分や、力を入れているチャネルはありますか?

SBIグループには、1,300万の証券口座数を含む5,050万の顧客基盤があります。「暗号資産もSBI」をキャッチコピーに、グループ内のお客様へのリーチを強化し、暗号資産口座の利用を促進していきたいと考えています。

――グループ内で、暗号資産の口座を持っている方の比率はどのくらいでしょうか?

SBIグループの証券口座開設数は1,300万口座以上となっていますが、そのうち暗号資産口座はグループ全体で約90万口座です。つまり、暗号資産口座を持っているのは証券口座を開設している人の全体の10%未満という状況ですね。

まずはここを全体の20%程度にする、つまり証券口座開設者の5人に1人が暗号資産に興味を持ち、投資の選択肢として検討していただけるようにしたいと考えています。

近藤 智彦
SBI VCトレード株式会社 代表取締役社長
2007年SBIホールディングスに新卒入社、 SBIグループの情報システムを担当。
その後、同グループの電子決済事業を経て、 外国為替関連事業を営むSBIリクイディティ・ マーケットにおいてシステム担当役員を務める。
2019年SBI VCトレード取締役就任以降、暗号資産・ Web3関連事業を中心に従事し現職。
SBI大学院大学経営管理研究科を2016年修了。
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